「この塗料なら、下塗りはいりませんよ。」
最近、こんな提案を受けたり、広告を見かけたりすることが増えました。
「下塗りがいらないなら工事も早く終わるし、費用も抑えられるのでは?」と期待したくなる気持ち、よく分かります。
工事が早く終わり、費用も安くなる。お客様からすればかなり魅力的な話に聞こえると思います。
業者側から見ても、下塗りなしなら塗料代も人工もその分安くなるわけですから、かなりメリットになります。
これ、双方にとって一見聞こえのいい話に思えるかもしれません。
が、自分はその提案を採用しませんでした。
理由はシンプルです。
塗装は下地処理が一番重要だからです。
その中でも下塗りは、上塗りを長持ちさせるための土台になります。
ここを省くことは、自分にはできません。
今回は、なぜ私がその提案を採用しなかったのか、現場で感じていることをそのままお話しします。
下塗り不要の提案が増えている理由【現場で感じた変化】
「下塗り不要」と聞くと、新しい技術のように思う方もいるかもしれませんが、
こうした塗料は昔からありました。
私が気になっているのは、
ここ最近、塗料不足や下塗り材が入りにくくなってから、この提案を受ける機会が以前より明らかに増えた、という点です。
ホルムズ海峡情勢による塗料不足についての現状はこちらで詳しく書いています↓
ナフサ不足で外壁塗装はどうなる?現場で実際に起きている“塗料不足の本当の話”
だからといって、すべてが悪いとは思っていません。
が、ここぞとばかりにその塗料を押してくるのは、正直なんだかなぁ・・・という気分になります。
塗装は下地処理が一番重要です。
その工程を省く提案には、自分はどうしても慎重になります。
下塗り不要は本当に大丈夫?結論は一般住宅ではおすすめしません
結論から言います。
私が25年以上施工してきた中で、
一般住宅の塗り替えで、本当に下塗りが不要だった現場はほぼありません。
家は一軒一軒違います。
サイディングなのか。
モルタルなのか。
金属なのか。
どれくらい傷んでいるのか。
その状態を見て、その家に合った下塗り材を選ぶ。
これが塗装の基本です。
経験上、いくら下塗り不要と謳っている塗料でも、ほぼ確実に数年後に不具合が出てくると思います。
下塗り不要で「上塗り2回」は本来の3回塗りではありません

ここは特に誤解されやすいところです。
「下塗りはしませんが、上塗りを2回塗るので大丈夫です。」
そんな説明を受けることがあるかもしれません。
でも、現場ではこれ全く別の話。
ちょっと待ってくれよ!と言いたくなってしまう。
下塗りと上塗りは、材料そのものが違います。
現場ではよく、
「下塗りはノリみたいなもの」
と説明しています。
壁と上塗りをしっかりくっつける役目です。
一方、上塗りは仕上げるための塗料です。

つまり、
上塗り1回目が下塗りの代わりになることはありません。
同じ塗料を2回塗っても、本来の「下塗り+中塗り+上塗り」とは全く別物なんです。
下塗りの役割|なぜ上塗りでは代わりにならないのか
「どうせ最後は見えなくなるなら、下塗りはいらないのでは?」
そう思われる方もいます。
でも、下塗りは色を付けるために塗るわけではありません。
例えば傷んだ外壁では、そのまま縫っても1回目の上塗りは下地にどんどん吸われてしまいます。
上塗りをしっかり密着させること。
傷んだ外壁の吸い込みを止めること。
劣化した下地を補強すること。
そして、上塗り本来の性能をしっかり発揮させること。
これが下塗りの役割です。
だから私は、下塗りを省くことには抵抗があります。
下塗り不要が危険になりやすい外壁とは?

特に注意したいのは、次のような外壁です。
チョーキングしているサイディング
白い粉が手につくような外壁です。
こういう外壁は吸い込みが強いため、下塗りで下地を整えないと上塗りが十分に密着しません。
金属部分
トタンやガルバリウム鋼板、鉄部には専用のプライマーや錆止めが必要です。
古い塗膜が弱っている外壁
見た目では分からなくても、古い塗膜だけ弱くなっていることがあります。
そのまま塗れば、数年後に古い塗膜ごと剥がれたり、膨れたりする原因になります。
高級塗料でも下塗りを間違えると長持ちしません
「無機だから安心。」
「フッ素だから長持ち。」
もちろん、塗料そのものは優れています。
でも、
下塗りを間違えれば、高級塗料でも本来の耐久性は発揮できません。

現場では、上塗りは高価な塗料なのに、下塗りだけコストを抑えた見積もりを見ることもあります。
自分は塗料の名前より、
「なぜこの下塗り材を選んだのか。」
こちらの方が何倍も重要だと思っています。
そのくらい、下塗りって大事。
その工程を省くのがどのくらい危険かってことなんです。
下地処理の大切さについてはこちらで詳しく説明しています↓
▶︎外壁塗装は「塗料」より下地処理が大事です|実はここで耐久性かなり変わります
「下塗り不要」のカタログにも注意書きがあります
ここ注意してもらいたいんですが、実際に「下塗り不要」と書かれた塗料でも、カタログをよく見ると、
「下地の状態によっては施工できません」
という注意書きが小さく書かれていることがほとんどです。
つまりメーカーも、
「どんな外壁でも下塗りなしで大丈夫」
とは言ってない。
結局は、現場で外壁を見て判断することが基本なんです。
万が一数年後に剥がれた際に、「これは下地の状態が悪かったからです」と後から言い逃れをするための逃げ道としか、自分には思えません。
下塗り不要と言われたら業者に聞いてほしいこと

もし見積もりを取るなら、一つだけ聞いてみてください。
「この家に、この下塗り材を使う理由は何ですか?」
良い業者なら、
「外壁が傷んでいるから。」
「吸い込みが強いから。」
「金属だから。」
というように、理由まで説明してくれるはずです。
逆に、
「メーカー指定です。」
「この塗料は下塗り不要なので。」
だけなら、一度詳しく聞いてみることをおすすめします。
まとめ|「何を塗るか」より「どう下地を作るか」が大切です
「下塗り不要で施工できます。」
これは塗装は、下地処理が一番重要だからです。
完成した日は、どの家もきれいです。
でも、本当に差が出るのは5年後、10年後です。
私は、
塗装は「何を塗るか」より「どう下地を作るか」で決まると思っています。
見えない工程を大事にしている業者かどうか。
そこを見極めることが、長持ちする塗装につながると私は考えています。
よくある質問
Q. 本当に下塗り不要の塗料はありますか?
A. 条件付きであります。ただし一般住宅では、外壁の種類や劣化状況を確認したうえで判断する必要があります。
Q. 上塗りを2回塗れば下塗りの代わりになりますか?
A. なりません。下塗りと上塗りは役割も材料も違います。同じ塗料を2回塗っても、本来の3回塗りにはなりません。
Q. 見積もりで確認した方がいいことは何ですか?
A. 「なぜこの下塗り材を使うのか」を聞いてみてください。理由を説明できる業者ほど、外壁の状態を見て施工方法を決めています。

